Date:2026年2月9日 | Category:IT特許Q&A
「汎用的な生成AIを用いることに特許性があるの?」と思われることもあると思います。
しかし、まずは、自社事業における「当たり前の工夫」にこそ注目してください。
近年、AI開発現場は、複数の生成AIを組み合わせた「エージェント型」「オーケストラ型」と移行しています。
今回は、エージェント型生成AIについて発明を抽出する際に、どのような視点を持つべきかを説明します。
- 「自社事業のフロー」に最適化した判断ロジック
生成AIの本質は、プロンプトによって「判断、判定」させることにあります。ここで、生成AIを起動させるタイミングを考えます。
・どのタイミングで、生成AIを実行させるか?
・複数の生成AIを、どのようなフローで実行していくか?
・全体として高速したフローで、複数の生成AIを実行するには、どのような全体構成にするか?
自社事業特有のフローを、生成AIに例えて考えていただきたいと思います。
- 「汎用ツールの組み合わせ」に宿る独自性
汎用の生成AIを用いたとしても、「どのツールを、どの順番で、どのような条件で組み合わせたか」を考えてください。
・複数のデータベースに対して、クエリの内容に応じて検索の重み付けをどう変えるか?
・プロンプトによって、生成AIの「振る舞い」をどのように統制するか?
- 「ビジネスの安定運用に欠かせない」発明
・ハルシネーションを防ぐための、複数の生成AIの組み合わせ
・トークンコスト低減のための、複数の生成AIの組み合わせ
・ユーザの意図に応じた、複数の生成AIの組み合わせ
「こんな細かい工夫なんて、特許になるはずがない」と思考を停止することは機会損失の1つです。
なぜその処理が必要だったのか」という課題解決のストーリを言語化することは、生成AIの組み合わせを思考することと同じことです。
Date:2026年2月8日 | Category:IT特許Q&A
1.発明の3つの型
「発明」とは、天才的なひらめきや、企業の研究所が生み出すもの、というイメージがあるかもしれません。
しかしながら、発明には「3つの型」があると言われています。
- 言語モデルのアルゴリズムのような、根本的な研究や技術開発によって抽出される発明(第1の型)。
- 特定の装置やプログラムについて、 精度や速度を向上させていく狭く深く入る発明(第2の型)。
- ビジネスモデルのように、既存技術AとBを組み合わせて、新たな効果を奏する発明(第3の型)。
実は、第3の型が、ビジネス的には有効であって、比較的抽出しやすい発明となります。
2.第3の型の発明の抽出方法
- 自社のサービスや技術、将来やりたいことを、1つずつ小さな札に書く。
- その札を箱に入れて、ガラガラと混ぜる。
- 箱から3枚の札を取り出す。
- その3つを組み合わせた発明を、5分間だけ「頭がちぎれるほど」集中して考える。
- 考えついたらノートにメモし、考えがつかなかったらその日は終わる。
3.社内文化としてのブレインストーミング
- 3つの箱を用意する。
- 第1の箱に、自社技術を記載した札を複数入れる。
- 第2の箱に、自社サービスを記載した札を複数入れる。
- 第3の箱に、世の中の動向や他社サービスを記載した札を複数入れる。
- 第1~第3の箱それぞれから、札を1枚ずつ取り出す。
- その3つを組み合わせた発明を、5分間だけ「頭がちぎれるほど」集中して考える。
- 考えついたらグループ内では発表し、雑談のように話し合う。
- ※ブレインストーミングでは、他者のアイデアを絶対に批判してはいけません(ルールです)。更にかぶせて、そのアイデアを膨らませることが重要です。
一見、関係なさそうな要素が組み合わさることで、「あ、これは面白いかもしれない!」という、これまでの常識にとらわれないアイデアが次々と生まれます。
4.発明は「センス」ではなく「習慣」
このようなブレインストーミングをグループ内で習慣化することによって、「既存の要素を新しい視点で見つめ直すこと」ができます。単なる特許出願のためではなく、小さな事業戦略につながると思われます。
Date:2026年2月8日 | Category:IT特許Q&A
自社事業から発明を掘り起こす「発明抽出」は、競合他社に対する優位性を築くための極めて重要なプロセスです。しかし、「何が発明に該当するのかわからない」というのが普通です。
発明抽出について、弁理士の3つの視点をご説明します。
- 特許は自社事業を守るためのものですので、発明も、自社事業から掘り起こすことが重要です。
発明抽出には、とにかく少人数のグループディスカッション(ブレインストーミング)が重要です。
このとき、重要なのは、リーダの「質問力」です。
最初は、できる限り、(1)多様且つ多数のアイデアを抽出させていきます。その上で、(2)その大量のアイデアを、自社事業に沿って収束させていきます。
- アイデアは、自社事業の「課題」から逆算すると考えやすいです。
発明とは、大発見である必要はありません。、開発設計過程で直面した「小さな不便」や「エラー」をどう解決したか、に注目してください。
・処理速度を上げるために工夫した構成やアルゴリズムは?
・通信の安定性を確保するために追加した制御フローは?
・ユーザの誤操作を防ぐために導入したユーザインタフェースは?
- 「ビジネスモデル×技術」の掛け合わせで考えてください。
自社ビジネスに、汎用的な既存技術を適用した場合、「特有のデータ制御」や「生成AIに対するプロンプト」の工夫も注目してください。
- 「他社が真似したくなるポイント」を探ってください。
「もし競合他社が同じサービスを始めたら、どこを真似されると一番困るか?」という視点を持ってみてください。
- 発明抽出を、「社内の文化」にしてください。
これは、1回のミーディングではなく、継続的なプロセスにしてください。例えば定例会議に10分だけ、全員でアイデアを言い合う場があってもいいと思います。
「これは特許になるかも?」と気軽に相談できる雰囲気を作ることが重要です。
自社事業に基づく発明について、特許を取得することができれば、広告宣伝として機能するだけでなく、事業の参入障壁を構築することになります。
Date:2026年2月8日 | Category:IT特許Q&A
「特許公報」は、「権利関係が書かれた読みにくく難しい法律文書」というイメージを持つかもしれません。しかし、特許公報は、その企業が注目する「技術動向の情報誌」でもあります。特に、競合他社が次に何を狙っているのか、業界全体がどの方向に進んでいるのかを読み解く上で、これほど信頼できる情報はありません。そのためにも、自社から見て、競合他社の特許公報は常にウォッチしておくことが重要です。
公開特許公報は、出願後1年6カ月で必ず公開されます。また、特許出願後、早期審査によって特許査定となった発明は、特許公報によって直ぐに公開されます。
特許公報は、弁理士であっても、非常に読みにくいものです。概念的に記載されており、何を言っているのかサッパリわからない、ことも多いと思います。
そこで、簡単なコツをお教えします。最初に重要なのは「木を見ず、森を見る」イメージです。
- 特許庁のJ-Platpatから、競合他社の「企業名」で一覧を検索します。
- 最初は、登録番号(特許番号)が付与された特許公報を開きます。
- 【要約書】と【図面(選択図)】のみを閲覧していき、その企業が出願している技術内容の雰囲気のみを見ていきます。
- 注目すべき特許公報が見つかった場合、【発明が解決しようとする課題】【発明の効果】を最初に読みます。課題・効果の記載から、その発明が何をしたいのか、を大凡理解します。
- 次に、【図面】を眺めます。競合する同業者の特許公報であるほど、何をしようとしているのか、大凡理解できると思います。
- 自ら目的に近い特許公報であった場合、その特許公報のFターム、FIターム、IPC等を控えておきます。
- 更に、特許庁のJ-Platpatから、「企業名」&「Fターム」等によって検索して絞り込みます。
注目すべきは、特許公報(特許番号付与)の場合、特許請求の範囲の【請求項】の記載には、下線が引かれている場合があります。これは、拒絶理由を解消するために限定された部分ですので、非常に重要な部分となります。
技術者にとって、自社出願も重要ですが、競合他社(仮想敵国)の技術動向を知ることは極めて重要です。その中に、次の開発のヒントが含まれている場合があります。
弊所でも、競合他社の技術動向ウォッチサービスも提供しております。ぜひ、相談ください。
Date:2026年2月8日 | Category:IT特許Q&A
1.「プロンプト」は特許の対象になるか?
プロンプトは、人の自然言語に過ぎず、生成AI側で様々ケースを想定して回答文を出力しています。しかしながら、プロンプトとして、生成AIに十分な情報と適格な指示を与えることによって、その回答精度を高めることができます。プロンプトは、ある意味、プログラムソースコードのようなものであり、安易に周知公開していいものでもありません。
- 特許にならない例:
プロンプトとして、単に「あなたはソフトウェア技術者です。・・・について回答してください。」と入力しても、これは「人間による言葉の使い方の工夫(精神活動)」とみなされ、技術的手段でもなく、特許性が認められません。
- 特許になる例:
「ユーザの入力情報に応じて、特徴あるパラメータや情報を含むプロンプトを自動的に作成し、そのプロンプトを生成AIへ入力し、回答をユーザへ返答するシステム」は、プロンプトの自動制御に特徴があり、特許性が認められます。
2.想定例:「カスタマーサポート・エージェント・システム」
ユーザが曖昧な質問をした場合、汎用的な生成AIでは一般的な回答しかできません。
例えば、RAG(検索拡張生成)のような、「コンテキストを自動補完してプロンプトを動的に生成する発明」を考えてみます。
- ユーザの入力文から、コンテキスト(外部情報)を検索する。
- そのコンテキストとユーザの権限レベルに応じて回答することを指示する第1のプロンプトを作成し、第1の生成AIへ入力し、第1の回答文を得る。
- 第1の回答文にハルシネーション(嘘)が含まれているか否かを判定するべく、第2の生成AIへ入力し、判定結果を得る。
- ハルシネーションを含むと判定された場合、第1の回答文からハルシネーションを除去した第2の回答文を作成するべく指示する第2のプロンプトを、第1の生成AIへ入力し、第2の回答文を得る。
3.請求項(クレーム)でチェックする点について
- 主語は、「人」ではなく、必ず「~手段」とする。「ユーザが・・・をA手段へ入力する」ではなく、「A手段がユーザから・・・を受信する」という記述する。
- 生成AIに入力するプロンプトについて、特徴あるパラメータや情報が含まれることを明確にします。
「何に基づいて」「どのように判定して」プロンプトを記述しているのか、を論理的に記述します。
- プロンプトに数式的な制御を加える場合、数式そのものを請求項に記載するのではなく、その数式の概念(入力・処理・出力)を論理的に記述します。
4.特許化の必要性について
- 「プロンプトエンジニアリングなんて、ノウハウに過ぎない」と考える方もいます。
しかし、API経由でサービスを提供している場合、入出力のパターンからプロンプトの構造をある程度推測(プロンプト・インジェクション攻撃など)できます。
特許化することによって、自社事業の模倣から防止する手段となります。
- 生成AIを用いたサービスを提供する場合であっても、バックエンドの生成AIの特徴ある制御を特許化することは、サービスの技術的優位性の証明になるだけでなく、顧客に対する広告宣伝として機能します。
5.エンジニアが意識すべき点について
- プロンプトの中に、コンテキスト(外部情報やベクトルなど)を組み込んでいるか?
- ユーザの入力文を、そのままではなく、所定条件に基づいて更新しているか?
- 1回の生成AIの利用でなく、複数回の生成AIの利用(例えばマルチステップ(Chain of Thought)」を自動化しているか?
- 生成された回答を評価又は判定して、更にプロンプトを自動的に書き換えて再実行するループを構成しているか?
- トークン数を節約するために、特別なプロンプト制御や生成AI制御を実行しているか?