Date:2026年2月28日 | Category:IT特許Q&A
EU-AI法(European Artificial Intelligence Act)について、外観を理解するためにわかりやすい記事を見つけました。
EU AI法の概要と日本企業に必要な対応を解説・よくある質問をまとめたQ&Aも紹介
https://www.businesslawyers.jp/articles/1431
ここで、個人的に注目したのは、顧客企業の求めに応じて、GPAIモデル(汎用目的AIモデル)を用いて、顧客情報に基づく分析及び情報提供するディプロイヤーについてです。
例えばバックグランドで生成AIを用いてユーザ特有の情報を提供する企業や、コンサルティング会社、法律事務所、特許事務所も該当すると思います。
ディプロイヤーは当然、顧客企業に対して、秘密保持契約(NDA)や業務委託契約によって、GPAIモデルの利用について事前合意が必須となります。
- AIシステムを利用すること
- そのAIシステムに、オプトアウト(訓練禁止)を設定していること
しかし、実は最も重要なことは、
- その分析及び情報提供に利用したプロンプトを開示させる
ことではないか?と、個人的に思いました。
一般的な生成AIを用いて高度な分析結果を得るためには、プロンプトの工夫は必須となります。
一方で、プロンプトの工夫のみでは回答精度にも制限があり、ディプロイヤー内でRAG(検索拡張生成)を構築し、知識データを蓄積している場合が多いと思います。
ここで注目すべきは、ディプロイヤーが、顧客企業毎にRAGを構築しているかどうか?、過去に収集された他社情報が混在していないか?にあります。
即ち、ディプロイヤーが使用するAIシステムのオプトアウトのみに注意するのではなく、ディプロイヤー内の知識データの蓄積にこそ注意すべきです。
一方で、ディプロイヤーにとって、プロンプトの開示にはかなり抵抗があると思います。
大変難しい問題ですが、顧客企業がディプロイヤーと取引する場合に、注目すべき点でもあります。
(あくまで個人的な雑感に過ぎず、法的根拠などありません)
Date:2026年2月24日 | Category:IT特許Q&A
オンラインサイトのサービスは、AWS(Amazon Web Services)やGCP(Google Cloud Platform)のようなマルチクラウドによって構築される場合が多くなっています。
一方で、AIエージェントは、これらマルチクラウドと連携することによって、多様なサービスを提供することが想定されています。
今後、この分野では、「異なるクラウド間を、AIエージェントによって連携させる発明」の特許が多く出願される、と思っています。
しかしながら、一般的なビジネスフローを、AIエージェントによって複数のクラウドを連携させただけの発明では、拒絶される可能性が高いです。
ここで、AIエージェントの発明として、以下のような、特許的な観点を列挙します。
- サービスの外観から見えにくい技術的課題を解決するために、AIエージェントが特有情報によってクラウド間の連携を制御している場合。
一般的なビジネスフローで想定できないが、クラウド間を連携させるために、データ同期、メモリ共有、セキュリティレベルなどの技術的な工夫を、AIエージェントが制御している場合、発明として想定できるものです。
- 異なるクラウド間のプロトコル的な技術的課題を、AIエージェントによって解決する場合。
- 異なるクラウド間で連携させるために、特有のデータ構造を設定した場合。
- マルチクラウドの連携の中に、生成AI(例えばAWSのAmazon Bedrock)が介在する場合、その生成AIに対するプロンプトに、特有情報が記述されている場合。
- AIエージェントで、クラウドのリソースを最適化制御する場合。
クラウドコストを最適化するために、ワークロードの負荷予測に基づいて動的にクラウド間のタスクを切り替えるようなオーケストレーション技術は、発明として想定できるものです。
Date:2026年2月18日 | Category:IT特許Q&A
自社事業のために生成AIを利用する場合、プロンプトにおける特許性の有無を検討することは、非常に重要です。
「プロンプトなんて特許にならない」と思い込む前に、ダメ元で一度、弁理士とディスカッションすることも必要かもしれません。
プロンプトには、一般的に以下の項目を記載することが好ましいとされています。
- 役割定義
- 知識データの提供
- 出力形式の指定
- 思考プロセスの指示
- 制約条件・禁止条件の指定
ここで検討するのは、自社事業・自社サービスに照らして、特有な条件を設定しているか否か、にあります。
- 役割定義
特許性を見出すのは難しいように思えます。
- 知識データの提供
例えばRAG(検索拡張生成)のような知識データについて、自社事業に合わせて、どのような情報を、どのようなデータ形式で利用するか、を検討する必要があります。
- 出力形式の指定
一般的なJSONなどではなく、自社事業に合わせてどのようなデータ形式へ加工するか、を検討する必要があります。
- 思考プロセスの指示
一般的なステップバイステップではなく、AIエージェントも考慮して、自社事業に合わせたCoT(Chain of Thought)の論理的ステップを指示しているか、を検討する必要があります。
- 制約条件・禁止条件の指定
出力情報や思考プロセスについて、自社事業に合わせた制約や禁止する条件があるか、を検討する必要があります。
Date:2026年2月17日 | Category:IT特許Q&A
現在、ユーザは、5G/6G/無線ネットワーク/光ネットワークのような次世代通信インフラを介して、人工知能としての生成AIにアクセスし、様々な知識を得ることができるようになってきました。
しかしながら、AIとネットワークとが融合した技術までは、まだ十分に発展してきていないと思います。
これからは、AIに何を掛けるか?(AI×?)を競う時代になってくると思われます。
その代表的なものとして、「AI×ネットワーク」があり、例えば「AI駆動型ネットワーク」や「AI分散ネットワーク」のような新たな技術領域が、特許出願の主戦場となってくると思われます。
この融合領域で勝つための特許戦略について、発明抽出の観点を考えてみました。
- 狙うのは「境界線」にある
AIとネットワークとを結びつける接点部分に、工夫した点が有るか否かを検討してください。
第1に、AIから見た、ネットワークにおける訓練(学習)データ、対象(入力)データ、プロンプト、通信制御を検討することができます。
第2に、ネットワークから見た、AIの分散協調を検討することがきます。
- エッジAI
全てを大規模なLLMで処理するのではなく、階層化された末端のエッジ(縁)AIの挙動を検討することできます。
エッジAIは、端末に近いエッジでAI処理を実行するものであって、リアルタイム性とプライバシー保護を両立させることが鍵となります。
- AIネットワーク・オーケストレータ
AIによって、通信トラフィックに応じた制御をワークフロー(例えば動的リソース割当て)を記述したプロンプトを、複数のAIを連携させるオーケストレータに指示します。
このとき、各AIが、ネットワークの各要素を制御するものであり、オーケストレータのワークフローに従って、ネットワーク全体が制御されるような技術です。
- AIモデルの分散化
AIモデルを1か所の生成AIに収集させて訓練することなく、ネットワーク上にあえてモデルの更新値のみを分散させて共有するような技術も想定できます。
従来、ビジネスモデルの特許明細書は、「如何に概念的に書いて、具体的に書かないか」を追求されているような気がします。
概念的に含めることが、訴訟に強いと思われていることが、一理あるのかもしれません。
日本では、そのようなビジネスモデル特許思考が強すぎるように思います。
一方で、特に米国のAI企業の特許明細書は、かなり技術的に深く記載した明細書が多いように感じます。
個人的には、AI×ネットワークにおける「技術的根拠」を、明細書の中で明確に言語化する必要があると思っています。
Date:2026年2月16日 | Category:IT特許Q&A
AIエージェントは、バックエンドで自律的に機能するために、法的な注意点が生じると考えています。
利用者側は、サービス提供者側に対して、「AIエージェントによって生成・実行された回答情報やプロセスが、第三者の知的財産権を侵害しないこと」の保証を求めると思われます。
- サービス提供者側は、「ユーザのプロンプト(指示)に起因する場合は免責とする」ことを契約書に記載する必要があります。例えば「A社の特許技術を参考にして効率化した技術を提案して」のような、侵害を誘発するような指示を明確に禁止する必要があります。但し、この「起因」に基づく責任の切り分けは難しいです。
- サービス提供者側は、例えばRAG(検索拡張生成)の場合、知識データが、適切なライセンス(パブリックドメイン)に基づくものであること保証する必要もあります。
- サービス提供者側は、AIエージェントの予測不能な挙動に対して、損害賠償額の上限額も設定した上で、ユーザと契約する必要もあります。
- サービス提供者側は、AIエージェントが使用する外部ツールやライブラリ、参照先を、法的に確認済みのものだけに制限する必要もあります。例えばホワイトリスト/ブラックリストを設定したものであってもよいかもしれません。
- サービス提供者側は、AIエージェントが出力する回答情報が、知的財産権の侵害の有無を推論する判定プロセスを設けることも必要かもしれません。侵害の可能性が高い場合、「警告」を出して、その実行をブロックする必要もあります。
- サービス提供者側は、AIエージェントのワークフローによって複数のAIを連携させる中で、強制的に人間の承認を介在させることで、不用意な挙動を防止することができます。このとき、人間の承認を介在させたログを残すことも必要です。