生成AIを用いたプロンプトエンジニアリングの特許戦略について
1.「プロンプト」は特許の対象になるか?
プロンプトは、人の自然言語に過ぎず、生成AI側で様々ケースを想定して回答文を出力しています。しかしながら、プロンプトとして、生成AIに十分な情報と適格な指示を与えることによって、その回答精度を高めることができます。プロンプトは、ある意味、プログラムソースコードのようなものであり、安易に周知公開していいものでもありません。
- 特許にならない例:
プロンプトとして、単に「あなたはソフトウェア技術者です。・・・について回答してください。」と入力しても、これは「人間による言葉の使い方の工夫(精神活動)」とみなされ、技術的手段でもなく、特許性が認められません。 - 特許になる例:
「ユーザの入力情報に応じて、特徴あるパラメータや情報を含むプロンプトを自動的に作成し、そのプロンプトを生成AIへ入力し、回答をユーザへ返答するシステム」は、プロンプトの自動制御に特徴があり、特許性が認められます。
2.想定例:「カスタマーサポート・エージェント・システム」
ユーザが曖昧な質問をした場合、汎用的な生成AIでは一般的な回答しかできません。
例えば、RAG(検索拡張生成)のような、「コンテキストを自動補完してプロンプトを動的に生成する発明」を考えてみます。
- ユーザの入力文から、コンテキスト(外部情報)を検索する。
- そのコンテキストとユーザの権限レベルに応じて回答することを指示する第1のプロンプトを作成し、第1の生成AIへ入力し、第1の回答文を得る。
- 第1の回答文にハルシネーション(嘘)が含まれているか否かを判定するべく、第2の生成AIへ入力し、判定結果を得る。
- ハルシネーションを含むと判定された場合、第1の回答文からハルシネーションを除去した第2の回答文を作成するべく指示する第2のプロンプトを、第1の生成AIへ入力し、第2の回答文を得る。
3.請求項(クレーム)でチェックする点について
- 主語は、「人」ではなく、必ず「~手段」とする。「ユーザが・・・をA手段へ入力する」ではなく、「A手段がユーザから・・・を受信する」という記述する。
- 生成AIに入力するプロンプトについて、特徴あるパラメータや情報が含まれることを明確にします。
「何に基づいて」「どのように判定して」プロンプトを記述しているのか、を論理的に記述します。 - プロンプトに数式的な制御を加える場合、数式そのものを請求項に記載するのではなく、その数式の概念(入力・処理・出力)を論理的に記述します。
4.特許化の必要性について
- 「プロンプトエンジニアリングなんて、ノウハウに過ぎない」と考える方もいます。
しかし、API経由でサービスを提供している場合、入出力のパターンからプロンプトの構造をある程度推測(プロンプト・インジェクション攻撃など)できます。
特許化することによって、自社事業の模倣から防止する手段となります。 - 生成AIを用いたサービスを提供する場合であっても、バックエンドの生成AIの特徴ある制御を特許化することは、サービスの技術的優位性の証明になるだけでなく、顧客に対する広告宣伝として機能します。
5.エンジニアが意識すべき点について
- プロンプトの中に、コンテキスト(外部情報やベクトルなど)を組み込んでいるか?
- ユーザの入力文を、そのままではなく、所定条件に基づいて更新しているか?
- 1回の生成AIの利用でなく、複数回の生成AIの利用(例えばマルチステップ(Chain of Thought)」を自動化しているか?
- 生成された回答を評価又は判定して、更にプロンプトを自動的に書き換えて再実行するループを構成しているか?
- トークン数を節約するために、特別なプロンプト制御や生成AI制御を実行しているか?